難病が教えてくれたこと
第5話
そしてやってきた陸上大会。
私は今とても緊張している。
体育祭とは全く違うグラウンド。
「如月!落ち着け!」
…うるせぇ、分かってる。
そう、今は短距離の競技直前。
私は第1レーン。
スタート合図の人と呼吸を合わせる。
「位置についてー…よーい…」
ーパアン!
一斉に走り出す。
私は銃の音じゃなくて、なる前のカチッて音で走り出した。
…ああ、気持ちいい。
この感覚、久しぶりだ。
「李那!がんばれ!」
海澪の応援の声はいつもより大きい。
体育祭ではそこまで本気で走ってないからね。
本気で走るからっていう条件で応援してもらうことになったんだ。
「李那!」
うん、蒼空も来てるんだね。
ちゃんと聞こえるよ。
耳はいいんだから。
「1位は…染井高校!」
染井高校は私の学校だ。
良かった、勝てたんだ。
姉妹高校の吉野高校に。
「如月!流石だよ!」
小宮先生も全力で応援してくれてたもんね。
「李那ぁ!1位おめでとうううう!」
…このうるさい声は…
「お父さん…」
やっぱりか…
休みとるって言ってたもんね…
「すごいぞ!李那!」
「まだあるから!」
まだまだ私の出るのはあるから!
勝ったんだから決勝戦がまだあるんだから!
「次は長距離だな!」
「…うん、そうだね。」
裕くんが出るやつだ。
「中矢!がんばれよ!」
先生が裕くんに声をかける。
「はい!がんばります!」
裕くんの顔はキラキラ輝いていて。
「…行ってくるわ!李那!」
「うん、頑張ってね…中矢くん…」
…素直になれない天邪鬼は…
裕くんじゃなくて…私だ…
「…おう…」
裕くんはぎこちなく微笑むとグラウンドに向かって走っていった。
1500…
裕くん、頑張って…
「1位!染井高校!」
…勝てたんだ…良かった…
こうしてると中学を思い出すなあ…
楽しくてしょうがない…
【如月李那side END】

【古川海澪side】
李那、頑張って…
隣は蒼空。
離れたところに何故かデブ。
来たんだ、アイツ。
多分裕くんを応援するためだと思うけどさ。
残念ながら裕くんはまだ李那の事好きだからあんたには手の届かない人だよ。
「…あのー…」
休憩タイム。
私はある人に声をかけられた。
「俺、柊秀一って言います。」
柊秀一【ヒイラギシュウイチ】。
あれ?どっかで聞いたことあるような…
ないような…
「名前言っただけじゃ分からないよね。
吉野高校陸上部部長、短距離エースです。」
あ、わかった。
この人短距離走ってた。
この大会は男女混合で組まれてる。
「あ、はい。
えっと…なんですか?」
「えと、簡潔に言うと惚れました?」
…ん?
んんんんん?
「ここじゃちょっと…
向こうに場所変えません?」
…今更かい!
「…はい…」
仕方なくついて行くことにした。
…良かった、蒼空が今いなくて。
聞かれたら死ぬ。
「えっと、改めて柊秀一です。」
「あっ、どうも。古川海澪です。」
「知ってます。如月さんを応援してるの毎年見てましたから。」
…毎年?
あ、いつも同い年の李那を応援するために大会来てたっけ。
「応援してる姿を見て、惚れました。」
この人単刀直入過ぎない?!
「…いや、あの…」
「とりあえず連絡先交換しませんか?」
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