難病が教えてくれたこと
もう、夕彩さんのケチ。
喋ってもいいじゃん。
裕くんは前で笑ってるし…
「…ん、もう喋っていいぞ。」
「ツナパスタ食べてたんですね!」
「おう。ナポリタン食いたかったのにお金足りなかった。」
まあ、ほかのパスタと比べたらツナパスタ安いからね。
ちっ、同類だと思ったのに。
まあ、夕彩さんに限ってそれはないんだけどさ。
「夕彩さん今何してるんですか?」
「私?普通に専門学生してるけど?」
「え?」
「調理の。」
あ、この人調理行ったんだっけ。
「楽しいよ。」
…いいなあ、まだ体動くって。
「お前も高校卒業したら調理こればいいじゃん。」
…理想では私これから保育系には行きたいんだよなあ…
まあ、体が動けばの話なんだけどさ。
「そーですなあー…死んでなければ?」
あはっと笑って誤魔化しておいた。
全国的に見て、ALSの人ってほぼ自殺で死んでるんだよね。
お姉ちゃんは笑ってたけど、私たちの知らないところで泣いてたのを知ってる。

“死にたい”

そう何度も言ってた。
私だって死にたくてしょうがない。
「死んでなければって…」
夕彩さんはお姉ちゃんの後輩だ。
2つ年下の、お姉ちゃんの後輩。
「奈那先輩じゃないんだから。」
「…」
黙って笑っておいた。
お姉ちゃんは遺書を残して死んだ。
“私がALSで死んだことは伏せておいてください。
ただ、普通に自殺と。”
たったこれだけ残して。
「じゃあ夕彩さん、私達はこれで!」
「あ、そう?またね、李那。」
…なんだ夕彩さん私の名前覚えてるじゃないか。
「…また…」
私は裕くんと一緒にお会計だけ済ませて外に飛び出した。
あのままあそこにいたら涙が堪えられないから。
「李那」
「ん?なに?」
「泣いてもいいぞ?」
泣く?
私が?
人前で?
…絶対嫌だ。
泣きたくない。
「んーん…大丈夫!」
裕くんに悟られないため。
私は満面の笑顔を見せた。
「李那…」
多分裕くんは気づいてるんだろう。
私がお姉ちゃんのことを思い出して泣きそうになっていることを。
< 46 / 200 >

この作品をシェア

pagetop