重なった社会~Ivy with little spider~
屈強な男は、相も変わらず血溜まりから抜け出そうともがいていた。

刹那、ダストボックスの上から黒い槍のようなものが伸びてきた。
節と繊毛を持つ其れは、蜘蛛の足だった。

狙い違わず男の右腿を貫き、男は枯れた声で絶叫を上げる。
チンピラ共の視線は男に、そして蜘蛛の足の主へと移る。


ダストボックスに座っている影は、黒色の直毛を腰まで伸ばした女性だった。

禍々しい8つの目が付いた、目元を隠す仮面。

ハイネックの長袖ドレスは黒と黄色の縞模様。

そして、背からは4本の異形の脚が生えている。

その姿は蜘蛛を連想させるに十分。
なので、彼女は「女郎蜘蛛」と呼ばれていた。
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