重なった社会~Ivy with little spider~
畜生。ああ、畜生。
そもそもあの女が悪いんだ。

いや、あの女に誘われてホイホイと付いて行った自分が悪いのか?

違う、あの女が俺を誘ったから悪いんだ。自業自得だ!

男が死んだのも、俺の身元を知った上で金を脅し取ろうとしたからだ!!

畜生!畜生!


河内の混濁した思考は、次第に逆恨みへと変化する。
だが、そればかりでは先に進まないことも自覚はしていた。

少しでも気分を晴らそうとしたのか、河内は自らが投げ捨てたケータイを拾い上げ、再び弄り始めた。





ピンポーン

ピンポーン


幾度も、ドアベルが鳴り響く。

河内はビクリと体を震わせ、頭のてっぺんから血の気が引くのを感じた。
嗚呼、ついに警官共がお迎えに来たのか……と。
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