重なった社会~Ivy with little spider~
「と、ともかく急げ!
非常口の前に車つけてるからな!
荷物とか金とかいいから、とにかく急げ!
ほ、他の奴らは全員集まってるんだ!
お前が最後なんだ!急げ!
非常階段ダッシュで降りたら直ぐ車だから、な!」

オキは、返事も聞かずにドアフォンのカメラの前から走り去った。


「他の奴も連れて行くのかよ……ってお、おい!ちょっと待て、俺も行くから!」

ケータイを乱暴に後ろポケットに突っ込み、普段のハイカットのシューズの靴ひもを解く暇も惜しんで、サンダルを履いてドアを開けた。

無論施錠はしていない。
そんなことすら、すっかり頭から消え失せていた。



乱暴にドアを閉めた後、ドアフォンのディスプレイはジジっと音を立てて砂嵐に変わる。
数秒後には、何の変哲もなくドア前の映像を再び移し始めた。
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