重なった社会~Ivy with little spider~
息絶え絶えになりながら、河内は非常階段の扉を開く。
降りようとした時、明らかに違和感を感じた。


この高級マンションの非常階段の部屋は、螺旋階段まで耐熱コンクリートで出来ていた。
その為、階段を下りると足音がコンクリートで反響し、最上階から1階まで漏れなく聞こえる。

河内が住んでいるのは、12階。このマンションは15階建て。
下り階段でも、一気に下りるのはそれなりの時間がかかる。



音がしないのだ。
先に階段を降りているはずの、オキの足音が。



違和感は河内の足を止め、思考を冷静な状態へと戻した。
だが、それは少し遅すぎたようだ。


ハメられた…!!!!


そう、確信した時には何者かに足を引っ掛けられ、さらに追い打ちとばかりに背中も押されていた。
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