重なった社会~Ivy with little spider~
例の男女を呼び出して取り囲んだとき、屈強な男の方は女を背に庇い、全く物怖じせずに河内達を睨んでいた。

つい数日前に男に袋叩きにされた河内は、その恐ろしさをよく知っていたのでなかなか手を出せずにいた。


男が、ボキリボキリと指の関節を鳴らして一歩踏み出そうとしたとき、オキは河内達の後方にあるダストボックスに腰かけた影に一声かけた。


「て、手伝うって言っただろ! な、なんとかしろよ!」


オキが足をガクガクと震わせ、屈強な男を指さした瞬間だった。


河内の顔の横を、何か黒くて太いものがものすごい速さで通り過ぎた。

其れが蜘蛛の足だと認識出来た時には、ソレが目の前の屈強な男の左右の膝と肘が打ち抜き、まるでバンザイをするかのようなポーズで男を釣り上げた時であった。
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