重なった社会~Ivy with little spider~
「此処のファイアーウォールを自主的に強化してたそうですね。行動自体は非常に素晴らしいことですが、次の日に支障をきたす業務は……頂けませんよ?」

「あはは、ばれました?」


部屋に入るなり苦い顔して溜息一つ付いたのは、ヒョロリとした老年の女性だ。

首筋までに切りそろえた髪と整った顔立ちは、大物女優のような貫禄と凛とした美しさを醸し出している。
この女性こそ、主任調査員である山田英恵(やまだ・はなえ)だった。


「ってか、徹夜して何仕上げてるんですか。"第一"の暇な面子にしてもらえば良いのに…」
紺のカーディガン姿となった晴香は呆れたように呟いた。

「やーだよ。だって、ボクって凝り性ですから。」
緩く頬を緩めた表情そのままで、浅木は机に置かれたタッチ型ディスプレイをチョン、と叩いた。
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