重なった社会~Ivy with little spider~
「ああ、阿波野補助員……すみませんね。」

山田は給湯室に向かう阿波野を見送ると、手元のディスプレイに再び目を戻した。


「そうそう。浅木調査員、今日は午後から本庁に行ってもらえませんか?」

「了解しました~。」

ディスプレイから目を離すことなく、山田は言葉を続ける。

「あと、叶野調査員もお願いしますね。まだ慣れてないでしょう?本庁は。」

「了解です。……がちがちにならないように努力します。」

もうすでに、声色が固い。何せ、免許の更新と入隊式以外は殆ど行ったことがないのだから。

「ダレ過ぎも禁物ですよ?浅木調査員みたく。」

「え~」

ブーブーと言いたげに頬をわざと膨らませた先輩を見ると、自然と苦笑が口に浮かぶ晴香であった。
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