重なった社会~Ivy with little spider~
ケータイのディスプレイから、不快にならない程の光が放たれる。
その光は、掌ほどの立体的なビジュアルを形成した。
これは周囲の人には見えず、このケータイとIPCを連動させている晴香しか見えない映像である。

ポチポチといぢり、先ほど使った機能……ムービー記録モードを起動させた。
晴香の視覚が得た情報はIPCを通し、無線でケータイに送られていたのだ。
無論、録画開始時用の音は鳴らないように改造済み。

……そこ、法律違反とか言わない。


記録したムービーにはバッチリとオヤジの顔が映っていた。
よく見たら、目が泳いでいる。

そそくさと電車を降りる姿のところで、ムービーを一時停止し、その停止画面を画像として保存した。
移動中かつ横顔で何とか相手を特定できる角度……つまり、この晴香が撮ったと特定されにくい場面だ。



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