乙女ゲームの攻略キャラに転生した
その夜はなかなか寝付けなかった。
(吊弦…吊弦…)
心の中でその名前がリピートされる。
嬉しい…反面不思議だ。
吊弦という名前だけじゃない。
秋声も野菊も紫水も天音も。全部に聞き覚えがあった。
なんだろう。
ここに来る前の事っていうのは確かなんだけどな…
あー、頭がぐちゃぐちゃしててなんか気持ちわるい。
こんな時こそゲームして心を落ち着かせたいところなのに…
結局あの乙女ゲームもクリア出来ていないし…
はぁ、せめて吊弦ルートは全クリしたかった!
ん?
吊弦ルート?
吊弦って?
私じゃね?
その瞬間頭に大砲をぶち込まれたぐらいの衝撃がはしった。
「お……思い出した…!!」
私がここに来る前徹夜でやり込んでいた(それが原因ではねられた)乙女ゲーム、泡沫の恋。
舞台は江戸。
主人公は現代、つまり未来からタイムスリップし迷い込んだ設定だ。
ここがどこなのかも分からず途方にくれていた所を秋声という人物に助けられ涼風凛へ。
なんとそこは遊女ならぬ遊男の集まるところだったのだ!
帰る場所も行く宛もない主人公はそこで遊男たちのお世話係をすることに。
最初は渋々だったけど皆と接するうちにどんどん心を開いていって_____
なんとびっくり。
今の状況と同じじゃないか!!!!!!!!!!!!!!!!
そうつまり、ここは泡沫の恋の世界なのだ。
道理で時々デジャブを感じることがあったんだ!
遊男なんて初めて見たはずなのに!
あーーー
スッキリした!!!!!!!!!!!!!!
あ、でも待って。1つ気がかりな点がある。
まぁお気づきのとうり
野菊や紫水、天音は泡沫の恋の攻略キャラである。
このゲームの攻略キャラは全員で7人。野菊、紫水、天音に加えお兄様方が3人。
そしてあと一人が吊弦。つまり私なのだ。
でももちろん、ゲームのなかでの吊弦はバリバリ男だ。
確かに売ってはなかった。
主人公と一緒に皆のご飯を作ったり部屋を掃除したり時にはちょっと街に出てみたり。
吊弦は結構な人気キャラクターで、私も1番はどれかとなったら吊弦をえらぶだろう。
その吊弦が。
女になってしまった。
しかも、中身が私。
なんか、世界中の吊弦ファンにあやまりたい…
そしてなぜ私が吊弦になったのかだが、
それについては簡単だ。
つまり転生というやつだ。
…もう一度言おう。
つまり転生というやつだ。
そう。私はよりにも寄って交通事故で死んだあと吊弦くんに転生してしまったのだ。