きらきら
「すごい…」
知らずしらずのうちに、口から感銘の声が出てしまい、その声を聞きつけて、その男子はすごい笑顔でこちらへと振り返る。
「本当にっ?本当にそう思う?」
あまりの気勢に、わたしは思わずたじろいでしまう。
わたしが困った表情を見せると、彼ははっとしたような顔になって、自分が興奮しているのが恥ずかしく思ったのか少し顔を赤らめた。ばつが悪そうに頭をかいている。
「わたしは良いと思うよ」
静かに言うと、彼はまた満面の笑みで喜ぶ。わたしはそんな彼の姿に思いがけず可愛いと思ってしまって、顔が熱くなってしまった。
何だろう、この感覚。
「湯川さんだよね?」
名前を呼ばれてどきっとする。目を丸くして彼のことを見た。
「どうしてわたしのこと知っているの?」
「ほら、先月の新聞に湯川さんの写真載ってただろ? それで」
少し、がっかりした。またあの写真か。あんな写真、誰だって撮れるし、選ばれたのだってきっと偶然なのに。賞を獲ったというだけで、みんなすごいもののように褒める。わたしにはどうしてもそれが耐えられなかった。
彼はすたすたと歩いて行くと、わたしがさっきまで居た暗室に入っていく。そこで吊るしている写真を眺めている。少しして、彼の写真も吊るしたままなことに気が付いて、慌てて暗室へと入って行った。
「この写真、すごく綺麗」
そう言って彼は一つの写真を指差した。見てみると、例の彼が写った写真だった。
「ほんと?」
「うん。どこがとはうまく言えないんだけど、なんだかすごく惹かれる」
「ありがとう」
昨日と同じように、鼓動が早くなっていく、心がざわついている、狭い暗室に人が二人も入っていると、二つの身体は触れあうほど近距離にある、手が触れ合う度に全身に激動が走った。
「俺も写真撮ってみようかな」
彼がおもむろにそう呟いた。
「やってみたら? きみなら、良い写真撮れると思うよ」
笑顔でそう答えた。人にこんな顔をして話している自分が、なんだか少しおかしかった。
キーンコーン―――せっかくの空気をぶち壊すかのように、校内にチャイムが鳴り響いた。
「やばい、早く片付けて戻らないと」
彼は慌てた様子で暗室を出ると、カメラやデッキを片づけ始めた。わたしも、暗室の薬品や写真を片づけた。時計を見ると、授業が始まるまでにもう二分となかった。
大きなカバンを掲げて彼が部室を出ようとしたところで、わたしは声をかけていた。
「ねぇ。きみ、名前は?」
部室の扉を開けた彼が振り返る。
「草賀優太、また放課後なっ」
そう言って彼は校舎の廊下を駆け抜けていった。わたしは彼の言葉に胸を打たれて、しばらくその場に立ちつくし、気づいた頃にはもう始業のチャイムが鳴っていた。
知らずしらずのうちに、口から感銘の声が出てしまい、その声を聞きつけて、その男子はすごい笑顔でこちらへと振り返る。
「本当にっ?本当にそう思う?」
あまりの気勢に、わたしは思わずたじろいでしまう。
わたしが困った表情を見せると、彼ははっとしたような顔になって、自分が興奮しているのが恥ずかしく思ったのか少し顔を赤らめた。ばつが悪そうに頭をかいている。
「わたしは良いと思うよ」
静かに言うと、彼はまた満面の笑みで喜ぶ。わたしはそんな彼の姿に思いがけず可愛いと思ってしまって、顔が熱くなってしまった。
何だろう、この感覚。
「湯川さんだよね?」
名前を呼ばれてどきっとする。目を丸くして彼のことを見た。
「どうしてわたしのこと知っているの?」
「ほら、先月の新聞に湯川さんの写真載ってただろ? それで」
少し、がっかりした。またあの写真か。あんな写真、誰だって撮れるし、選ばれたのだってきっと偶然なのに。賞を獲ったというだけで、みんなすごいもののように褒める。わたしにはどうしてもそれが耐えられなかった。
彼はすたすたと歩いて行くと、わたしがさっきまで居た暗室に入っていく。そこで吊るしている写真を眺めている。少しして、彼の写真も吊るしたままなことに気が付いて、慌てて暗室へと入って行った。
「この写真、すごく綺麗」
そう言って彼は一つの写真を指差した。見てみると、例の彼が写った写真だった。
「ほんと?」
「うん。どこがとはうまく言えないんだけど、なんだかすごく惹かれる」
「ありがとう」
昨日と同じように、鼓動が早くなっていく、心がざわついている、狭い暗室に人が二人も入っていると、二つの身体は触れあうほど近距離にある、手が触れ合う度に全身に激動が走った。
「俺も写真撮ってみようかな」
彼がおもむろにそう呟いた。
「やってみたら? きみなら、良い写真撮れると思うよ」
笑顔でそう答えた。人にこんな顔をして話している自分が、なんだか少しおかしかった。
キーンコーン―――せっかくの空気をぶち壊すかのように、校内にチャイムが鳴り響いた。
「やばい、早く片付けて戻らないと」
彼は慌てた様子で暗室を出ると、カメラやデッキを片づけ始めた。わたしも、暗室の薬品や写真を片づけた。時計を見ると、授業が始まるまでにもう二分となかった。
大きなカバンを掲げて彼が部室を出ようとしたところで、わたしは声をかけていた。
「ねぇ。きみ、名前は?」
部室の扉を開けた彼が振り返る。
「草賀優太、また放課後なっ」
そう言って彼は校舎の廊下を駆け抜けていった。わたしは彼の言葉に胸を打たれて、しばらくその場に立ちつくし、気づいた頃にはもう始業のチャイムが鳴っていた。