美男と美女がうまくいくとは限らない。
ーーーーーーーーーー咲妃乃side
暖かいぬくもりが心地いい
目を閉じていても感じる全身を覆う暖かさ
久々に感じた、この感覚
微睡む中、ゆっくりと目を開けた
「っ…!?」
ほどよく筋肉のついた腕に包まれて、目の前にはボタンのあいた白いシャツからはだけた男の人の胸
少し上を見るとそこには端正な顔で眠る春樹がいた
え?えっ、え!?
…そう、今、あたしは大好きな人に抱きしめられている
一気に身体に熱が湧き上がってくる
状況が飲み込めずに視線だけを動かして昨日の記憶をたどっていく
たしか昨日は遅くまで飲みすぎて…春樹の家に行くって話をして…
そこからが思い出せない
え、あたし何もしてないよね?
自分の格好を確認してみると
ちゃんとスーツのシャツは着ている…スカートもめくれてはいるがストッキングも履いている
うん、たぶん、寝ちゃっただけ…
しかし、春樹の姿を見るとスーツのシャツはすべてのボタンが外れていて、下は下着しか履いていない
え、ど、どういうこと!?
も、もしかしてあたしが一方的に襲ったとか…
変な思考が頭の中をグルグルと回る
もしそうだったらどうしよう!
恥ずかしすぎるっていうよりありえないでしょ、好きだからって同期に手を出すなんてっ
いくら男としばらくそういうことしてないからって、酔った勢いで欲が増すなんて……ありえなくもない…
目の前であたしの気持ちを無視しているように眠る春樹
少し身体を起こし、なかなか見ることのできない好きな人の寝顔を覗く
まつげ、長いなあ
もし付き合ったら、毎日この寝顔が見れるのかなあ…
「きゃっ…」
そんなことを思いながら見ていると手が滑り、体制を崩して春樹に覆いかぶさる形になってしまった
やばい、起きちゃうっ!
「う、ん…ん?」
目にかかった髪をよけて瞳を開ける春樹
寝起きにこの体勢って、あたし襲ってるみたいじゃん!?