美男と美女がうまくいくとは限らない。
「春樹ーーっ!」
突然、玄関が勢いよく開いて大きな声がした
な、なに?!お客さん?
あたしはお米を研いでいた手を止め、玄関の方へ振り向いた
するとそこには見慣れた顔がいた
「あれ、咲妃乃?」
「み、湊?」
現れたのは同期の湊だった
あたしと同様に、湊も目を丸くして驚いた表情をして考え込むように首を傾げた
「なんで春樹の家に咲妃乃?ん?こんな時間なのに?」
思いもよらない事態に頭が少し混乱をしている
少しの沈黙の末、考えがまとまったようだ
「しかも米研いでるし。え、まさか?咲妃乃と春樹って付き合ってーーー」
「ないない!」
「うわあ、まじか!良かった…焦ったし!」
その場にしゃがみ込んで安心したように笑顔になる湊
そりゃそうよね…
同期同士なんにもない関係が1番気楽で楽しかったのに、もし仮に付き合ったとかなってたら気まずいのは湊と未央よね
「で、なんで咲妃乃いるの?」
「…昨日、潰れて泊めてもらったの」
「ええ?!泊まったの!?2人きり?一生に寝たの?」
首を縦に振り、頷くとショックを受けたように頭を抱え出してしまった
「あいつ、手早そうだからな…俺を差し置いて咲妃乃にあんなことやこんなことしちゃってたり」
「してねえよ、バーカ」
「あ、おかえり春樹」
湊の如何わしい妄想にストップをかけるようにタイミングよく春樹が帰ってきた
春樹はなんでこんな事になってんだ、と文句を言いながら買い出しで頼んだ食材を台所に置いた
「おい、春樹!今日は俺と約束してただろー」
「ん?約束?…なんだっけ」
「これだもん。咲妃乃と一緒にいるからって俺のこと忘れやがってー。やっぱお前は女好きだな!」
「まあ、男よりは女が好きだな」
「咲妃乃はダメだって!」
どうやら春樹が湊との約束をすっかり忘れていたらしい
後から聞くと何度も連絡したみたいだが、反応がなかったから直接家まで迎えに来たそうで。
「ちょうど昼飯作ってくれるみたいだから湊も食っていけよ」
「まじ?咲妃乃作ってくれんの!」
「う、美味しくないかもよ…」
「咲妃乃作ったもんならなんでも美味しい!」
ここ数年、誰にも手料理を披露していなかったのに今日は2人も振舞わなきゃいけない大変な日になるようだ