美男と美女がうまくいくとは限らない。



もうあのときから4年かあ…
月日が流れるのは早い


月日ばかりが経って、あたしたちの関係は変わらぬまま
気持ちもあの日から身動きが取れていない



「よし、明日休みだしパーっと飲むか!」



定時になると待ちわびていたかのように春樹が現れる


あたし自身も久々の春樹と2人きりで飲みに行けると思うと自然と仕事のペースが早まり、残業なしで帰れた


人は楽しみがあると効率が良くなるというのは本当らしい



「今日は上半期お疲れ会ね」

「お、珍しく飲む気満々じゃん。いいねえ」

「春樹とは気を遣わずに飲めるからね」

「俺も!よし、行くか」



子供みたいにくしゃっと笑う顔は入社した頃と変わらない


春樹と肩を並べてオフィスから出る


春樹はいつも必ずあたしの右を歩く


あたしは少しでも近寄りたくて、カバンを左に持つ
でもきっと春樹は気づいてない
あたしだけの秘密の気持ち


これだけで満足だった
だから顔には出さない


仕事終わりで疲れているはずなのに足取りは軽く弾むようだった



「あ、2人とも!ちょっといい?」



会社のエントランスを歩いていると後ろからカツカツと早い足音が聞こえてきた



「私、広報部なんだけど、今月の社内報に成績トップの2人の記事を書こうと思ってるんだけど、ちょうど一緒にいるから写真撮らせてもらってもいいかな?」



定期的に発行される社内報
あたしもたまに目を通すけれど、うちの会社の社内報はある意味、奇想天外。


真面目な記事から社内の恋愛ネタまでありとあらゆることを書く


ただの噂の場合もあるからあまり真剣には読んでいなかった
そういうネタも書く意図はいろんな人が目に通しやすいように、ということらしい



「はい、いいですよ。咲妃乃もいいよね?」

「まあそういうことなら…」

「ありがとー!じゃあ2人もう少し近寄ってくれる?」



春樹との距離がグッと近くなる


肩と肩が触れ合う距離まで近づき、春樹の表情を見上げると、他人行儀のキラキラスマイル。


春樹は同期以外の女の人と関わるときはキラキラさんの仮面を被る


愛想よくして誰にでも良い顔をする…
そんなときの春樹をあたしは心の中でキラキラさんと呼んでいる



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