夏空フィッシュテール

心の洗濯は光り輝く空の下で

目を開けるとまだ暗く、隣で運転する夏樹さんが視界に入った。
そうして自分が泣き疲れて寝てしまったことに気付く。

「ご、ごめんなさい!」

シートにもたれ掛かっていた頭を勢いよく起こすと怠さを覚えた。一体どれくらい眠っていたんだろう・・・。

「よく眠れた?と言っても1時間くらいしか経ってないんだけど」

そう言われて車の時計を確認すると、20時15分になったところだった。
1時間も眠っていたなんて・・・。

「本当にごめんなさい。叩き起こしてくださってもよかったのに・・・」

「そんなことできないよ。せっかく気持ちよさそうに寝てるのに」

夏樹さんの言葉に恥ずかしくなる。憧れの人の前で寝顔を晒すなんて。
変なこと言ってないかな。い、いびきとか大丈夫だったかな・・・。
でもそんなこと聞けない。

「もう着くから」

そう言われてあたりを見回してみても暗くてよくわからない。けれど車のライトに照らされて両側に木が立ち並ぶ道が続いているのが見えた。
上り切って木々の道を抜けるとそこは、自販機の明かりだけがポツンとあるだけの広い駐車場のようだった。

「ラッキー。誰もいない」

夏樹さんはそう言って端の方に車一台分くらい空けて車を止めた。そうして車から降りて、後ろの座席から折り畳まれたシートを取り出す。

「白沢さん、ちょっと手伝って」

手招きされて車を降り、シートの端っこを引っ張った。その上に毛布を敷いて横たわる夏樹さん。
< 12 / 35 >

この作品をシェア

pagetop