夏空フィッシュテール
車に乗り込むと涙は次から次へと溢れてくる。

「何?どうしたの?さっきの人知り合い?」

さっちゃんは慌てたように聞いてきた。

「こんなんで外で食べるのは無理だな」

ため息まじりの修くんの声に申し訳なさが込み上げてくる。

「別に白沢が悪いとか思ってないから。そうだな、なんか買って俺んちは?」

そう言って修くんは車を走らせた。

「みんなごめんね・・・」

信号で停まると、修くんの大きな手が頭にポンポンと乗せられる。

「そんなことされたら、涙止まんなくなるじゃん・・・」

笑おうとするのに涙は止まらなくて。

「今は笑わなくていいから」

そう言って頭を撫でる手に、こんなことが前にもあったと、夏樹さんと星を見た日のことを
思い出していた。

修くんの家に着くと、さっちゃんと隼人くんがご飯を買いに出かけて行った。

「お待たせ」

甘い匂いとともに部屋に戻ってきた修くん。

「ちょっとは落ち着いたっぽい?」

そう言って湯気の立つココアを私に渡した。
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