夏空フィッシュテール
「別に気にするほどのことじゃないって。その代わり全部吐いてもらうからね」

さっちゃんは怒っているような心配しているような口調で私に言う。

「うん」

私は夏樹さんやみちるさんに出会った時のことから、全部を話した。
出会ってから連絡を取るようになったこと。
話を聴いてもらって夏樹さんの前で泣いたこと。
そして、編み物に興味を持ったこと。
編み物を教えてもらえることになったこと。
夏樹さんが女の人の名前を冷たい声で呼んだのを聴いたこと。
その後何事もなかったように日々が過ぎてきたこと。
さっき感じたこと。

話し終わるとまた泣きそうだったけど、私よりもさっちゃんの方が先に泣いていた。

「知らなかったよ。みひろがそんなことになってたなんて・・・」

服の袖で涙を拭きながらさっちゃんはまだ泣いている。

「それってさ、さっきのがショックだったってことだよな。好きな人が別の人と一緒にいたわけだし」

「・・・好き?」

私はまだ自分の気持ちがはっきりわからなくて、好きと言われてもよくわからない。
でもショックだったのは確か。すごく悲しかった。
夏樹さんに恋人がいたって、別におかしくないのに。
むしろ私に時間を割いてくれてたことの方が不思議だ。

「話を聴く限り好意はあるじゃん?」

「でも自覚してないのにこれが好きだって、恋だって押し付けることを俺はしたくない。白沢にはゆっくり答えを出してほしいから」

「そうだな」

修くんに言われて、隼人くんは納得したように返した。

私はこの気持ちの答えを出せるんだろうか。
いや、出さなければいけないんだ。私を心配してくれる友達のためにも・・・。
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