夏空フィッシュテール
寒さが痛みを伴う頃、道路には薄く氷の膜が張っていた。

あの日から夏樹さんから編み物教室の連絡は来ていない。
忙しいだけかもしれないし、そうじゃないかもしれない。聞かなければわからない。
だから私から連絡することにした。

断られるかもしれないし、出てくれないかもしれない。
そんなことを思ったら気分も悪くなってなかなかかけられなかった。
でも連絡しないことには何も始まらない。それにもう会えないなら一言くらいくれてもいいんじゃない?
そうして一度開き直ったからか、今なら何でもできる気がする。

かけ始めてしばらくすると夏樹さんが電話に出た。
その声は私と同じで、少し緊張したようなその声に私はちょっとホッとした。

「編み物教室、お願いしたいんですけど」

「あ・・・はい」

夏樹さんの会話はぎこちなく、まるで初めて喋るみたい。
そのまま約束を取り付け、明後日開催してもらうことになった。

電話を切って一気に力が抜ける。
今頃手が震えるなんて、こんなで当日は大丈夫なのかな・・・。
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