奪い婚 ~キミの嘘に唇をよせて、絡まる赤い糸をほどきたい~
【14】真実
 ―翌日―

 午前中は、青空が広がりいい天気だった。

 挙式は午後からだ。

 午後になり、空模様が変化を見せる。

 青空が陰り、曇り空になった。
 今にも降りだしそうな天候。
 ジュリアがホテルのエントランスから、空を見上げた。

「午前中晴れていたのに、いまにも雨が降りそうね」

「そうだな」

 俺達は白馬の馬車に分乗し、教会に向かった。王都プランティエから小高い山を登ると、森の中に白いチャペルが現れた。

 ロンサール公爵家とヴィリディ伯爵家の挙式。ホテルでの派手な挙式になるのだろうと勝手に想像していたが、まるで童話の中に迷い込んだような錯覚にとらわれた。

 きっとこの教会は、フローラが選んだに違いない。

 馬車から降り立ったロンサール公爵は、眉をひそめ空を見上げた。

「不吉な雲め。このような辺鄙《へんぴ》な場所を選ぶからだ」

 教会はすっぽりと黒い雲に覆われ、ポツポツと雨が地面に打ちつけた。

 教会の中では、白いタキシード姿のピエールが準備を整え待っていた。

 俺は一番後ろの席に並び、挙式の始まるのを待った。

 挙式が始まり、オルガンの演奏が鳴り響く。

 純白のウェディングドレスに白い薔薇のブーケ。長いウエディングベールがバージンロードで揺れている。

 ヴィリディ伯爵と共にバージンロードをゆっくりと歩くフローラ。

 眩いばかりの……
 美しさ……。

 フローラ……
 綺麗だよ……。

 ポツポツと降っていた雨は、次第に激しさを増した。教会のステンドグラスに大粒の雨が激しく打ちつける。

 フローラはヴィリディ伯爵から、ピエールの手へと移る。

 二人は並んで、神父様の誓詞を聞いている。互いに愛を誓い、指輪の交換をし、ピエールがフローラのウェディングベールを持ち上げようとした時……。

 突然、稲光がチャペルの中を切り裂き、ゴロゴロと激しい雷の音が鳴り響いた。

 ピエールはウェディングベールを持ったまま、ステンドグラスを見上げた。

 数秒ごとに光る稲光。
 地面を揺るがすほどの雷。

 参列していた者も思わず体を縮ませ、女性は小さな悲鳴を上げ怯えている。
< 101 / 154 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop