奪い婚 ~キミの嘘に唇をよせて、絡まる赤い糸をほどきたい~
それから一ヶ月が経過した。
外は小雪が舞っている。
季節が移り変わっても、フローラはまだ眠り続けたままだ。
ルービリア大学から寄宿舎に戻る。
帰宅と同時に階下の管理人室で電話が鳴った。
「はい、ルービリア大学寄宿舎です。これはロンサール公爵の……。はい、今戻られましたよ。少々お待ち下さい」
受話器を握っている管理人と目が合う。
「ウィンチェスターさん電話ですよ」
「いつもすみません。もしもしピエールか!?俺だ、アダムだ!」
ピエールからの電話に、俺は動揺を隠せない。フローラが急変したのではないかと、受話器を持つ手が震えている。
『アダムか……?』
暗く沈んだピエールの声が、受話器から聞こえた。
「久しぶりだな。フローラの様子は……?フローラはもう退院したのか?」
『……まだだよ。フローラはずっと眠ってる。俺が話しかけても、アイツ起きないんだ。全然……起きないんだよ……』
気の強いピエールが、電話口で男泣きをしている。ピエールの嗚咽が受話器から漏れた。
「ピエール……」
『お前に頼みがある……。こんなことが言える立場じゃないのは、よくわかってる。けど……もうお前にしか頼めない……』
「ピエール……」
『頼む。フローラに逢いに来てくれないか』
「俺が……?」
『俺じゃダメなんだよ。お前の声を聞いたら、フローラが目覚めるかもしれない。頼むよ……』
「でも……」
『子供にも逢ってやってくれ。フローラが命懸けで産んだ赤ちゃんなんだ。子供はもうすぐ退院する。顔を見てやって欲しい』
「ピエール……いいのか?俺がそんなことをして……。本当にいいのか?お前が築いた幸せを、俺が壊してしまうかもしれないんだよ」
『アダム……。きっと……フローラもお前を待ってる……』
「ピエール……。わかったすぐにプランティエに行く」
『……ありがとう。待ってるよ』
ピエールの声は涙声だった。
プライドの高いピエールが、俺に頼み事をするとはよほどのことだ。
それほどまでに、フローラの容態は重篤なのか……。
俺はピエールとの電話を切ると、すぐに自室に戻りボストンバッグに数日分の着替えを詰めた。
外は小雪が舞っている。
季節が移り変わっても、フローラはまだ眠り続けたままだ。
ルービリア大学から寄宿舎に戻る。
帰宅と同時に階下の管理人室で電話が鳴った。
「はい、ルービリア大学寄宿舎です。これはロンサール公爵の……。はい、今戻られましたよ。少々お待ち下さい」
受話器を握っている管理人と目が合う。
「ウィンチェスターさん電話ですよ」
「いつもすみません。もしもしピエールか!?俺だ、アダムだ!」
ピエールからの電話に、俺は動揺を隠せない。フローラが急変したのではないかと、受話器を持つ手が震えている。
『アダムか……?』
暗く沈んだピエールの声が、受話器から聞こえた。
「久しぶりだな。フローラの様子は……?フローラはもう退院したのか?」
『……まだだよ。フローラはずっと眠ってる。俺が話しかけても、アイツ起きないんだ。全然……起きないんだよ……』
気の強いピエールが、電話口で男泣きをしている。ピエールの嗚咽が受話器から漏れた。
「ピエール……」
『お前に頼みがある……。こんなことが言える立場じゃないのは、よくわかってる。けど……もうお前にしか頼めない……』
「ピエール……」
『頼む。フローラに逢いに来てくれないか』
「俺が……?」
『俺じゃダメなんだよ。お前の声を聞いたら、フローラが目覚めるかもしれない。頼むよ……』
「でも……」
『子供にも逢ってやってくれ。フローラが命懸けで産んだ赤ちゃんなんだ。子供はもうすぐ退院する。顔を見てやって欲しい』
「ピエール……いいのか?俺がそんなことをして……。本当にいいのか?お前が築いた幸せを、俺が壊してしまうかもしれないんだよ」
『アダム……。きっと……フローラもお前を待ってる……』
「ピエール……。わかったすぐにプランティエに行く」
『……ありがとう。待ってるよ』
ピエールの声は涙声だった。
プライドの高いピエールが、俺に頼み事をするとはよほどのことだ。
それほどまでに、フローラの容態は重篤なのか……。
俺はピエールとの電話を切ると、すぐに自室に戻りボストンバッグに数日分の着替えを詰めた。