奪い婚 ~キミの嘘に唇をよせて、絡まる赤い糸をほどきたい~
「アリスターも今年三歳になる。今は保育園だが、来年ガーネット芸術大学附属幼稚舎に入園が決まった」

「ガーネット芸術大学附属幼稚舎?プランティエ大学附属幼稚舎にしなかったのか?」

「アリスターはピアノも絵の才能もある。フローラの才能を受け継いでいるんだ。理数系よりも芸術肌だよ。幼少期より芸術に触れさせ、バイオリンやフルートも習わせるつもりだ」

「親バカだな。でもピエールの教育方針に賛成するよ。音楽や絵画は感性を豊かにする」

 アリスターは少し天然のある黒髪。白い肌に大きな瞳。フローラの描いた絵画にそっくりで、賢い女の子に成長していた。

「ねぇ、パパ。パパもにゅうえんしきに、きてね」

「パパも?」

「だってね。ママねてるし。ダディが、ひとりだと、さみしいでしょ」

「俺は寂しくないよ」

「だってね。マークもメアリーも、パパとママとさんにんでいくんだよ。だから、アリスターもさんにんがいい」

 俺とピエールは顔を見合せた。

「俺ら二人とアリスター?三人で手を繋いで歩くなんて、他人が見たら誤解されかねない」

 ピエールが笑いながら、俺を見た。

「確かに、誤解されそうだな」

 俺達は顔を見合わせ、クツクツと笑う。

「どうしてわらうの?アリスターはダディもパパもだいすきだよ。だから、きてね」

「そっか、大好きだよな。だったら、行くよ」

「だよな、三人で手を繋いで歩くか?」

 俺達は顔を見合せ爆笑した。
 他人の視線なんて、どうでもよかった。
 俺達はアリスターの父親だから。
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