奪い婚 ~キミの嘘に唇をよせて、絡まる赤い糸をほどきたい~
ピエールがアリスターに話しを始めた。

「アリスター。パパとママはアルフォンスドーテへ引っ越すことになったんだよ」

「そこは、とおいいの?」

「うん。遠いよ。でも寂しくないよ。アリスターも一緒に行くんだよ」

「アリスターも?ようちしゃは?」

「アルフォンスドーテの新しい幼稚舎に行くんだよ」

「おともだちも?」

「ガーネット芸術大学附属幼稚舎の友達は一緒に行けないけど、すぐに新しい友達が出来るさ」

「ダディもいっしょ?」

「ダディはプランティエ大学附属病院の仕事があるから一緒に行けないんだ」

「どうして?」

「この病院にたくさんの患者さんがいるからね。アルフォンスドーテにはパパとママと三人で行くんだよ」

「やだ、やだ。アリスターもいかない。ダディとずっといっしょがいい。やだ、いかない……うわぁーん」

アリスターはピエールに抱き着いて号泣した。

「アリスター、我が儘言わないで。ダディのところに、いつでも遊びに来ていいんだよ」

「やだぁー!ダディといっしょがいい!」

「今まで、ダディとずっと一緒だっただろ?ママはずっと病院で一人ぼっちだったんだよ。ママがどんなに寂しかったか、アリスターならわかるよね」

「……うん」

「だから、今度はママとずっと一緒にいる番なんだよ」

「こんどはママのじゅんばんなの……?」

「そう、ママと一緒にいる順番なんだよ。わかるな」

 ピエールはアリスターを宥めるように、丁寧に話しかける。

 アリスターはピエールの言葉に、小さく頷いた。
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