奪い婚 ~キミの嘘に唇をよせて、絡まる赤い糸をほどきたい~
【フローラside】
私はピエールと二人だけで、話がしたかった。
思うように言葉が話せない私は、まだ上手く自分の気持ちを表現することは出来ない。
けれど、このままアダムとアルフォンスドーテに行くわけにはいかなかった。
アダムから渡されたピエールとの離婚届。私はそれを広げ、ピエールの目を見つめた。
「本気……な……の?」
「うん。もっと早く渡すべきだったんだ。フローラが記憶を失っていた時、俺は君に嘘をついた。フローラの婚約者だと嘘をついた。お腹の子供も俺の子供だと嘘をついたんだ。自分の願望を成就するために、君に嘘をつき婚姻届にサインをさせた。自分の罪に……もうこれ以上耐えられない。フローラとは……暮らせない」
「ピエール……」
「俺は最低の男だよ。フローラやアダムに卑劣なことをしたんだ。謝ってすまされることではないことはわかっている。本当に……申し訳ないことをした。許して欲しいとは言わない……。軽蔑してくれて構わない」
「そんな……こと……できないよ。私こそ……ごめんなさい」
私はピエールにゆっくりと手を伸ばした。腕を上げることは、今の私にとって痛みを伴いまだ難しい。それでもそうせずにはいられなかった。
これはピエールの本心ではない。私を気遣う優しい噓だと気付いたからだ。
痛みを堪えピエールの背中に手を回した。ピエールは私を優しく抱き締めてくれた。
「あ……りが……とう。ピエール」
「フローラ……」
「アリスターを……そだてて……くれて……ありがとう。一緒にいてくれて……ありがとう」
私の頬を、涙が止めどなく流れる。
ピエールも肩を震わせ泣いていた。
「わたし……ピエールと結婚して、しあわせだったよ。ほんとう……だよ」
「フローラ……ありがとう。もう自分の気持ちに正直に生きていいんだ。アダムと幸せになってくれ。
ひとつだけ……頼みがある。アリスターと時々逢わせてくれないか?俺はアリスターを自分の娘だと思って育ててきたから……」
「うん……わかってる。ピエールは……アリスターの父親だよ」
「ありがとう……。フローラ幸せにな。三人で幸せになってくれ……」
あとはもう……
言葉にならなかった。
偽りで始まった結婚生活……。
でも、ピエールを好きになったことは……偽りじゃない。
ピエールは私の本心を知った上で、私とアリスターを愛してくれた。
自分を責め、別れを選んだピエール……。
この温もりは……
一生忘れないからね……。
私はピエールと二人だけで、話がしたかった。
思うように言葉が話せない私は、まだ上手く自分の気持ちを表現することは出来ない。
けれど、このままアダムとアルフォンスドーテに行くわけにはいかなかった。
アダムから渡されたピエールとの離婚届。私はそれを広げ、ピエールの目を見つめた。
「本気……な……の?」
「うん。もっと早く渡すべきだったんだ。フローラが記憶を失っていた時、俺は君に嘘をついた。フローラの婚約者だと嘘をついた。お腹の子供も俺の子供だと嘘をついたんだ。自分の願望を成就するために、君に嘘をつき婚姻届にサインをさせた。自分の罪に……もうこれ以上耐えられない。フローラとは……暮らせない」
「ピエール……」
「俺は最低の男だよ。フローラやアダムに卑劣なことをしたんだ。謝ってすまされることではないことはわかっている。本当に……申し訳ないことをした。許して欲しいとは言わない……。軽蔑してくれて構わない」
「そんな……こと……できないよ。私こそ……ごめんなさい」
私はピエールにゆっくりと手を伸ばした。腕を上げることは、今の私にとって痛みを伴いまだ難しい。それでもそうせずにはいられなかった。
これはピエールの本心ではない。私を気遣う優しい噓だと気付いたからだ。
痛みを堪えピエールの背中に手を回した。ピエールは私を優しく抱き締めてくれた。
「あ……りが……とう。ピエール」
「フローラ……」
「アリスターを……そだてて……くれて……ありがとう。一緒にいてくれて……ありがとう」
私の頬を、涙が止めどなく流れる。
ピエールも肩を震わせ泣いていた。
「わたし……ピエールと結婚して、しあわせだったよ。ほんとう……だよ」
「フローラ……ありがとう。もう自分の気持ちに正直に生きていいんだ。アダムと幸せになってくれ。
ひとつだけ……頼みがある。アリスターと時々逢わせてくれないか?俺はアリスターを自分の娘だと思って育ててきたから……」
「うん……わかってる。ピエールは……アリスターの父親だよ」
「ありがとう……。フローラ幸せにな。三人で幸せになってくれ……」
あとはもう……
言葉にならなかった。
偽りで始まった結婚生活……。
でも、ピエールを好きになったことは……偽りじゃない。
ピエールは私の本心を知った上で、私とアリスターを愛してくれた。
自分を責め、別れを選んだピエール……。
この温もりは……
一生忘れないからね……。