奪い婚 ~キミの嘘に唇をよせて、絡まる赤い糸をほどきたい~
 ――七月になり、夏も本番。太陽の日差しは、日増しに強さを増す。

 俺達はいつものように大学のカフェテラスで四人で寛ぐ。

「お二人さん、いいムードになってきたな」

 ピエールが俺とジュリアを冷やかした。

「ほんと、ほんと、アダム最近変わったよね」

 シャルルもピエールと一緒になって、俺達を冷やかした。

「何も変わってないよ」

 俺の隣でジュリアは耳たぶまで真っ赤に染め、恥ずかしそうに俯いた。

 俺は……
 少しだけ変わったのかもしれない。

 ジュリアといると気持ちが和み、勉学から解放されホッとすることもあるから。

 二ヶ月後に留学する俺は、ジュリアと逢えなくなることに、寂しさを感じる時もあった。

「それよりピエール。来月からプランティエだろう。宿泊先とか準備万端なのか?」

「ああ、父の知人宅にホームステイするんだ。公爵家だそうだ。可愛い公爵令嬢がいる家なら天国なのに」

「ピエール、もう一回言ってごらんよ。浮気厳禁だからね。ピエールが浮気したら、私もするから」

「はいはい、わかってるよ。浮気はしない。父が決めたことだ。逆らえないだろう」

 シャルルの剣幕に、ピエールは苦笑いだ。政略結婚はしないと豪語していたくせに、いつのまにか公爵令嬢に振り回されている。

 ピエールがシャルルを宥める様子を見ながら、俺とジュリアは顔を見合せて笑った。
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