奪い婚 ~キミの嘘に唇をよせて、絡まる赤い糸をほどきたい~
【1】出逢い
【アダムside】
―マジェンタ王国 王都ルービリア―
突然、激しい雷雨になった。
傘を持っていない俺は、慌てて雷雨の中を走る。行き交う車や馬車が雨水を飛ばし、ズボンの裾はすでにずぶ濡れだ。
黒い雲が空を覆い、雲の隙間から不気味な稲光が走る。
ごろごろと地響きを思わせるような音とともに、ドンッと地面を揺るがすような落雷に、俺は肩を竦めひたすら雨の中を走った。
この雷雨の中、道路の脇でハザードランプをつけたまま停車している車があった。
しかも運転席には女性が座っている。
この国で車を所有しているのは裕福な家庭である証拠。しかも女性が免許を取得し運転するなんて、とても珍しいことだ。
だが、高貴な家庭の令嬢ならば、自らハンドルを握るはずはない。
彼女は使用人なのかな?
通りすがりに車の中を見ると、女性が何度もエンジンを掛けようと、キーを回しているのが見えた。
キュンキュルルン……と小さな音を数回鳴らしたものの、車はそれきり音を立てなくなった。
エンストかな?
可哀想に……。
ていうか、この雷雨の中を走ってる俺の方が、よっぽど可哀想だよ。
……と、その時。
車中にいた女性と視線が重なった。
彼女が俺に手招きしながら、縋り付くような眼差しで俺を見た。
こんな雷雨なのに……
勘弁してくれよ。
車を押せとでも言うのか。
そう思いながらも、無視することはできず、俺は車に近付く。
車の窓が開き、彼女は運転席から身を乗り出した。
雨で視界が定まらない俺。雷の音に、ビクビクと身を竦めながら、彼女に視線を向けた。
―マジェンタ王国 王都ルービリア―
突然、激しい雷雨になった。
傘を持っていない俺は、慌てて雷雨の中を走る。行き交う車や馬車が雨水を飛ばし、ズボンの裾はすでにずぶ濡れだ。
黒い雲が空を覆い、雲の隙間から不気味な稲光が走る。
ごろごろと地響きを思わせるような音とともに、ドンッと地面を揺るがすような落雷に、俺は肩を竦めひたすら雨の中を走った。
この雷雨の中、道路の脇でハザードランプをつけたまま停車している車があった。
しかも運転席には女性が座っている。
この国で車を所有しているのは裕福な家庭である証拠。しかも女性が免許を取得し運転するなんて、とても珍しいことだ。
だが、高貴な家庭の令嬢ならば、自らハンドルを握るはずはない。
彼女は使用人なのかな?
通りすがりに車の中を見ると、女性が何度もエンジンを掛けようと、キーを回しているのが見えた。
キュンキュルルン……と小さな音を数回鳴らしたものの、車はそれきり音を立てなくなった。
エンストかな?
可哀想に……。
ていうか、この雷雨の中を走ってる俺の方が、よっぽど可哀想だよ。
……と、その時。
車中にいた女性と視線が重なった。
彼女が俺に手招きしながら、縋り付くような眼差しで俺を見た。
こんな雷雨なのに……
勘弁してくれよ。
車を押せとでも言うのか。
そう思いながらも、無視することはできず、俺は車に近付く。
車の窓が開き、彼女は運転席から身を乗り出した。
雨で視界が定まらない俺。雷の音に、ビクビクと身を竦めながら、彼女に視線を向けた。