奪い婚 ~キミの嘘に唇をよせて、絡まる赤い糸をほどきたい~
 その後、プランティエ大学でピエールに逢うことはあったが、ピエールはどこかよそよそしくて、他の学生と一緒に過ごすことが増えた。

 俺はピエールとの友情が、壊れ始めている事に気付く。

 なぜ?
 どうして……?

 フローラに逢えない寂しさと、ピエールとの間にできた溝を埋めることが出来ない虚しさ。その寂しさ紛らわせるために、俺は勉学に打ち込んだ。

 ピエールとの付き合いを一歩引くことで、他国の留学生と俺は、以前よりも会話をするようになった。

 医学の知識を高め合うには、絶好のチャンスだった。

 その結果、プランティエの学生だけではなく、多国籍の友人ができた。

 文化が違えば、考え方も違う。俺には外国人の考え方が凄く刺激的だった。

 勉学に勤しむ俺とは対照的に、構内でのピエールの生活は乱れ始めた。

 ピエールが俺のアパートを出て三ヶ月。

 俺は信じられない光景を目の当たりにする。

 ピエールが大学構内でベッティ シャガールと堂々と抱き合い、キスを交わしていたからだ。

 それは誰が見ても、恋人同士にしか見えなかった。

 俺は抱き合っている二人を見て、黙っていられなかった。

 自分でも頭にカーッと血が上がるのがわかる。キスをしている二人に近付き、思わず声を荒げていた。

「おい!ピエール!話がある!」

「何だよ。俺はお前と何も話すことはないよ。邪魔すんなよな」

「いいから、こっちに来い!」

 俺の怒りに、ピエールは苦笑しながら渋々ついてきた。木陰でピエールの胸ぐらを掴む。

「お前、フローラのこと本気じゃなかったのかよ!フローラがいるのに、何やってんだよ!」
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