奪い婚 ~キミの嘘に唇をよせて、絡まる赤い糸をほどきたい~
「……アダム」

 三ヶ月ぶりに逢うフローラ……。
 少しやつれた表情に、俺の胸は締め付けられる。

 フローラの瞳が次第に潤み、涙を堪えている。

「フローラ……どうしたの?」

「ううん、何でもないよ。どうしたのかな……。涙が勝手に……。変だね、私」

「フローラ……。ピエールのことか?」

「アダム……」

 フローラの瞳から涙が零れ落ちた。
 フローラは周囲を気にして、慌てて涙を拭う。

「アダム、もうすぐ仕事が終わるから、外で待ってて」

「わかった。外のベンチで待ってる」

 俺は図書館を出て、外に設置された木製のベンチに腰をおろした。

 フローラの涙を見てしまった俺は……
 二人の間に亀裂が生じていることを悟る。

 あんなに仲が良かったのに。
 一体何故……?

 俺は混乱していた。
 原因は、やはりピエールの浮気なのか。

 暫くしてフローラが図書館から出て来た。白いドレスの裾が、風に揺れている。

「待たせて、ごめんなさい」

「いや、俺こそ突然来てごめん」

フローラはベンチに腰を落とし俯いた。

「ピエールと何があったの?」

「……もう私達はダメだよ」

 フローラは両手で顔を覆い、さっきよりも激しく泣き始めた。

「……フローラ」

 俺は泣いているフローラをほっておくことができなかった。手を伸ばし、フローラの肩に触れる。泣いているフローラを、両手で抱き締めた。

 フローラは驚き、俺を見上げた。

「アダムに……逢いたかったよ……」
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