奪い婚 ~キミの嘘に唇をよせて、絡まる赤い糸をほどきたい~
 私の心の変化を、ピエールは感じとっていた。

 口に出さなくても、ピエールにはわかっていたんだ。

 苛立ち荒れていくピエール。そんなピエールを間近で見ているのも辛い。

 ――アダムに逢えなくなって三ヶ月。

 突然、王立図書館に現れたアダム。

 アダムに見つめられ、私は……自分の感情を抑えることが出来なかった。

 優しい言葉に、涙が溢れて止まらない。

「アダムに……逢いたかったよ」

 やっと……言えた。
 自分の素直な気持ち……。

 どうにもならないことは、自分が一番わかっていたのに。

 アダムのことが好きなのに、私はどうすることも出来ない。

 アダムの胸に顔を埋め、私は号泣した。

 私は、罪深い女……
 この心は、ピエールを裏切り……
 アダムに……。

 アダムは私をマンションまで送り届けてくれた。

 マンションの前で、ピエールが私を待っていた。

 ピエールは私とアダムを見て、怒りを露にした。

「やっぱり、そういうことだったんだな」

 ピエールがアダムに掴みかかり、思いきり殴りつけた。

「よくも!俺の女に!」

 容赦なくアダムを何度も殴りつけるピエール。アダムもピエールを殴りつける。

「……や、やめてー……!!」

 あんなに仲がよかった二人の争う姿を見たくない。

 私は泣きながら、ピエールに縋りつく。

「……ピエール、もう止めて。お願い…もう止めて……。誤解なの。アダムを殴らないで……」
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