奪い婚 ~キミの嘘に唇をよせて、絡まる赤い糸をほどきたい~
【アダムside】

 ――翌日、俺は大学の構内でピエールの姿を捜した。フローラのことをちゃんと話したかったからだ。

 ピエールは前にも増して荒れた生活をしていた。

 大学で次々と女子学生と付き合い、講義も受けないで校庭でいちゃついていたり、夜は盛り場に出掛け、酒や水商売の女性に溺れているという噂も聞いた。

 このままではプランティエ大学で単位を取るどころか、進級すらままならない状況だった。

 何とかしなければ……
 そんな思いから、ピエールを捜す。

 校庭で白人女性とキスを交わしているピエールを見つけ歩み寄る。ベッティとは明らかに異なる女性だ。

「ピエール、大切な話があるんだ」

「なんだ、お前か」

「ピエール、俺の話を聞いてくれ」

「あっちに行け、目障りだ!」

 ピエールの剣幕に、女性が気をきかせ立ち去る。俺はピエールに歩み寄った。

「お前、このままだと進級出来ないぞ。何のためにプランティエ大学に留学したんだ」

「進級?それがどーしたんだよ。お前に関係ないだろ!俺は何年プランティエに滞在しても構わないんだよ!フローラがこの国にいる限り、この大学に在籍する!」

 ピエールは勉学に励む様子もなく、フローラと別れるつもりもない。

「ピエール、フローラのことで話があるんだ……」
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