奪い婚 ~キミの嘘に唇をよせて、絡まる赤い糸をほどきたい~
「私……フローラに会いたい。何処に行けばフローラに会えるの?」

「フローラに会いたくてプランティエに来たのか?今から電話すれば、ここに来てくれると思うけど……」

 義理とはいえ姉妹なんだ。
 ジュリアが訪ねてきたのに、フローラが拒絶するはずはない。

「今夜はいい。フローラと二人だけで会いたいから。久しぶりに姉妹だけで話がしたいの」

 ――『久しぶりに姉妹だけで……』
 俺はジュリアの言葉をそのまま信じた。

「アダム君、フローラの住所と電話番号を教えて欲しいの」

「いいよ」

 久しぶりに会う姉妹。
 血の繋がりはなくても、募る話があるのだろうと、その時の俺は単純に考えていた。

「管理人さんに電話貸してもらえるかな?自分でかけたいから」

「……頼んでみる。一緒に行こう」

 部屋を出て、一階の管理人室の前に置かれた電話を借り、ジュリアはフローラに電話をした。

「もしもしフローラ、私、ジュリア。今ねプランティエにいるの。明日会えないかな?」

『……ジュリア?本当にジュリアなの?どうしてあなたがプランティエに?一人で来たの?何処に泊まってるの?』

「私?アダム君のアパートにいるの。今夜はここに泊めてもらうつもりよ」

『アダムの……アパートに?』

 俺はジュリアの喋り口調が、いつもと違うことに違和感を抱いた。控え目で可愛いイメージしかなかったジュリアが、フローラとの電話では大人びた口調に思えた。
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