奪い婚 ~キミの嘘に唇をよせて、絡まる赤い糸をほどきたい~
「ジュリア……」

「やだな。まだわからない?私はアダムの浮気を許したの。アダムはね、フローラとのことは遊びだったと私に謝罪したのよ。アダムがもう終わりにしたいって」

「……う……そよ」

「アダムは優しい性格だからハッキリ言えないのよ。ピエール君との友情を修復したくても、フローラがアダムから離れてくれないと出来ないでしょう」

「アダムが……本当にそう言ったの?」

 ジュリアが口角を引き上げた。

「そうよ。昨日もアダムのベッドで寝たわ。アダムは私を優しく抱き締めてくれた。私が作った料理を『美味しい』って言ってくれた。私達は愛しあってるの」

 二人が愛しあってる……?

「私はフローラを許さない。ピエール君がいるのに、親友のアダムを誘惑するなんて、ヴィリディ家の恥よ。でも、お父様には黙っててあげる。昨日の夜、アダムと過ごして、彼の本心がわかったから。だから、もうアダムには付きまとわないで!」

 私が……アダムに付きまとう?

 ショックで言葉が出なかった。

 反論したいのに、喉元に声が張り付いたまま、発することが出来ない。

 感情は高ぶり、胸が押し潰されるように苦しくなり涙が溢れた。

「フローラ、私のアダムをこれ以上誘惑しないで」

 ジュリアの言葉が鋭い刃物みたいに、胸を突き刺す。

 私は泣きながら、アダムのアパートを飛び出した。

 アダムが私を抱いたのは……
 遊びだったの?

 『愛してる』って言ったのは、嘘だったの……?

 もう……何を信じたらいいのか、わからなくないよ。
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