奪い婚 ~キミの嘘に唇をよせて、絡まる赤い糸をほどきたい~
【アダムside】

 俺はジュリアを部屋に残しプランティエ大学に行く。昼休みに学生課で電話を借りフローラの通うガーネット芸術大学に電話し、呼び出してもらったがフローラは電話に出ることはなかった。

 講義を終え、俺はフローラがいる王立図書館に向かう。

 図書館の受付には、別の女性が座っていた。

 どうしたんだろう……?
 胸騒ぎがした俺は、そのままフローラのマンションに向かった。

 ドアをノックすると、ドアチェーン越しにフローラの姿が見えた。

「フローラ、どうしたんだよ?」

「……アダム。ジュリアから話は聞いたわ。だから帰って。もう……大学にもここにも電話はしないで」

「ジュリア?何の話だよ?」

「お願いだから……もう帰って。アダムとはもう二度と逢わないから」

 フローラは言葉を詰まらせ泣いている。

「フローラ……?意味わかんないよ。フローラ……わかるように説明して」

「……ごめんなさい」

 そのまま無情にもドアは閉まる。

「フローラ開けてくれ!フローラ!」

 俺は拳でドアを叩いた。
 鈍い音が静かなフロアに響く。

 ドアの中からは何の返答もなかった。

 じんじんと痛む右手の拳を、力なくおろす。

 ジュリアがフローラに一体何を?

 俺は真相を確かめたくて、急いで自分のアパートに帰った。
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