奪い婚 ~キミの嘘に唇をよせて、絡まる赤い糸をほどきたい~
 マジェンタ王国王都ルービリアに帰国し、翌日からすぐにルービリア大学に復学した俺は、一心不乱に勉強に打ち込んだ。

 フローラのことを忘れるために勉学に勤しむ。

 大学の構内にあるカフェテリアでコーヒータイム。久しぶりに再会したシャルルが、俺に声を掛けた。

「アダム、お帰りなさい」

「シャルル、ただいま」

「留学期間を繰り上げたのね。勉強熱心なアダムらしくないわね。プランティエ大学で何かあったの?それともホームシック?」

「いや、別に……」

「ピエールは元気なの?」

「ああ、元気だよ」

「本当は悪い噂を耳にして、気になってるのよ」

「悪い噂?」

「うん、ルービリア大学からプランティエ大学に留学してる男子がいてね。ピエールが荒れてて、このままだと進級できないだろうって……。プランティエ大学では、ロンサール公爵の権力も及ばないでしょうしね」

「ルービリアにいても、そんな噂話が耳に入るんだな」

「そうだよ。悪い噂はすぐに広まるから。それに……」

「それに?」

 シャルルは俺を見つめ言葉を濁す。

「アダムとピエールが険悪だって。何が原因なの?」

「何でもないよ」

「それならいいけど。私が妬けちゃうくらい仲がよかったのに、険悪だなんて心配したのよ」

 ピエールの顔が脳裏を過ぎる。
 ちゃんと講義に出ているのか心配だったし、フローラとのことも気がかりだった。

「でも、ジュリアには驚かされたわ」

「ジュリア?」

 もしかして……
 自殺未遂のことも知っているのか?

 まさかな……。
 ジュリアの自殺未遂を知っているのは、俺とフローラだけだ。

「私ね、ジュリアに『プランティエに行きたい』って相談されたの」

「なんだ。シャルルがジュリアをそそのかしたのか」

「やだな。行きたいって言うから、応援しただけよ。どうだった?ジュリアの恋は成就したのかしら?」
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