奪い婚 ~キミの嘘に唇をよせて、絡まる赤い糸をほどきたい~
「ジュリア、どうしてそんなに俺のことを……?」

「私ね、ルービリア大学に入学した時からアダム君のことを知っていたのよ」

「入学した時から……?」

「うん、初登校した日にね。私不安で俯いていたらアダム君が『学生課ならこっちだよ』って案内してくれたの」

「俺が……」

「アダム君と学部は違ったけど、あの日からずっとアダム君に片想いしてた……」

「あの時の、みつ編みの女の子……」

「そう。あの時の……みつ編み」

 髪型も服装も全然違うため、俺は今まで気付かなかったんだ。あの日のことは、俺にとって記憶に残らないくらいの、些細な出来事だった。

 でも、ジュリアはあの日から俺のことをずっと想い続けていたなんて……。

「ジュリア、今度二人で食事に行こうか」

「えっ……」

「美味しいランチのお礼がしたい」

「……いいの?」

「うん、行きたいレストランある?」

「アダム君と一緒なら……何処でもいい……」

 ジュリアの瞳から涙が溢れ、頬を濡らした。

「泣かないで……。もう泣き顔は見たくない」

 俺はジュリアを放っておけなかった。
 罪の意識から、ジュリアを守らなければいけないと、そう思い込んでいた。

 ――プランティエのホテル。血に染まったバスタブ。

 あの日の光景が……、俺の頭から離れない。

 ジュリアが自傷行為をすれば、フローラが深く傷付いてしまう。俺は二度とジュリアを傷付けてはいけないんだ。
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