奪い婚 ~キミの嘘に唇をよせて、絡まる赤い糸をほどきたい~
 ジュリアを大学に残し、寄宿舎に戻った俺は、何をする訳でもなく遠く離れたフローラの事を想った。

 マジェンタ王国に戻った後も、フローラのことを忘れた日はなかった。

 ルービリア大学でジュリアと一緒に過ごしていたけど、それは恋愛感情とは異なるものだった。

 ジュリアの気持ちを受け止めようと努力したけど、どうしてもフローラを忘れることはできなかった。

 フローラの……涙。
 フローラの……潤んだ瞳。

 俺は……どうしてあの時……
 フローラを一人にしてしまったんだろう。

 フローラをプランティエに置き去りにした罪悪感が深く心に刻まれ、自責の念に駆られる。

 ――俺達は終わったんだ。
 何度も何度もそう心に言い聞かせた。

 ◇

 ――翌日、昼休憩。
ジュリアはカフェテリアにも校庭にも姿を見せなかった。

 俺は久しぶりに男友達数人とカフェテリアでランチをする。

「アダムが俺らと昼飯だなんて、久しぶりだよな。いつも一緒の可愛い彼女どうしたんだよ?振られたのか?」

「違うよ。彼女は友達だよ」

「友達?友達が毎日お前にランチボックス持ってこねーよ」

 やっぱり、誰が見ても俺とジュリアは付き合ってるように見えるよな。

「それより、お前知ってる?ピエール、もうこの大学に戻らないって話」

「ああ、知ってる」

「だよな。お前とピエールは親友だもんな。アイツさ、女性を妊娠させて結婚したらしいな」

「ああ、それも知ってる」

「相手の女、スゲー美人らしいな。一歳年上の伯爵令嬢だろう。公爵の子息と伯爵令嬢、高貴な家柄にはイイ女が寄ってくるってか。散々遊んで伯爵令嬢と結婚するなんて、羨まし過ぎるぜ」

「そんな情報、誰に聞いたんだよ」
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