奪い婚 ~キミの嘘に唇をよせて、絡まる赤い糸をほどきたい~
 ピエールの真意がわからず、一度は欠席にするつもりだった挙式。

 けれど、俺には……
 どうしても、二人に確かめたいことがあった。

 すでに入籍を済ませている二人。
 今更真実を確かめた所で何も変わりはしないのに。

 それでも俺は、ピエールに会ってもう一度話をしたかった。

 ピエールもきっと……
 俺との関係に、ケジメをつけたいとそう思っているに違いない。

「アダム君にも招待状を送るなんて……。二人は何を考えているんだろう。アダム君、出席しないよね?」

「……いや、出席するよ」

「えっ……出席するの?」

「うん。俺、確かめたいことがあるんだ。ピエールともう一度話しがしたいから」

「確かめたいこと?」

「きっとピエールもそう思ってるはずだ。だから俺に招待状を……。でも心配しないで、ジュリアが不安になるようなことはしないから。二人の挙式を友人として祝福するつもりだから」

「……うん」

 俺は二度訪れることがないと思っていたマルティーヌ王国王都プランティエに行く決意を固めた。

 二人の挙式を見届け、自分の気持ちにも終止符を打つ。

 そのためにも、ピエールの口から聞きたい。『フローラの子供は、俺の子供だ』と。

 ピエールがそう断言してくれたなら、それだけでいいんだ。

 その言葉を聞いたら、俺はフローラへの想いを全て断ち切ることが出来る。

 フローラもそうだろう……。
 だから……俺に招待状を……。

 フローラ……。
 俺は……君の幸せを……
 心から祈っているんだ。

 だから、二人の挙式に参列しても取り乱したりしたい。
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