奪い婚 ~キミの嘘に唇をよせて、絡まる赤い糸をほどきたい~
【13】悲しい再会
 ―七月―
 挙式に参列するため、俺はルービリア駅に向かった。

 ルービリア駅には、ロンサール公爵やヴィリディ伯爵、両家の親族と家族。二人とごく親しい友人が数名。同じ蒸気機関車に乗り込み、マルティーヌ王国に出発する。

 前席に座っていたヴィリディ伯爵夫人が、ヴィリディ伯爵に問い掛ける。

「ねぇ、あなた。私のことわかるかしら?挙式で恥をかかないか心配だわ」

 私のこと……?
 一体、何のことだよ?

 俺には、その言葉の意味が理解出来なかった。

 長時間を費やし、俺達はプランティエ駅に足を降ろした。

 駅に待機していた車に分乗し、俺達は宿泊先のホテルに直行する。

 ホテルに到着すると、長旅の疲れからかみんなすぐに部屋に入った。

 ――そして、その日の夜。
 ホテルの広間で身内だけの細やかなパーティーが開かれた。そのパーティーに、挙式を翌日に控えた二人も姿を現した。

 数ヶ月ぶりに逢う二人。
 フローラのお腹は少しふっくらとしていて、妊婦だと誰が見てもわかる体型になっていた。

 ピエールの家族や親族に、挨拶をして回る二人の姿に、俺は胸が締め付けられる。

 幸せそうに微笑むフローラ。
 その笑顔はシャンデリアの下で、きらきらと輝いて見えた。

 フローラは……
 今、幸せなんだね。

 会場の隅にいた俺に、ピエールが気付いた。

 ピエールは俺に会釈し、フローラとともに両親や親族への挨拶を済ませると、直ぐさまヴィリディ伯爵夫妻の元に歩み寄った。

 ヴィリディ伯爵は俺の至近距離に立っていたため、その会話が自然と耳に入った。
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