なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「ありがとう。……だが、大丈夫だ」


 曙光に断れても、朱熹はニコリと笑って寝服を下げただけだった。


 おそらく断るだろうなと予想はしていたので、気にすることはなかった。


 けれど曙光は、せっかく朱熹が用意してくれたのに、断るのは失礼でなかったかと気を揉んだ。


 寝服の恰好になって気が緩んでしまったら、うっかり朱熹に手を出してしまいそうで怖かった。部屋に二人きりというこの状況は、前回よりもことさら意識してしまう。


 朱熹の天女のように艶やかで可愛らしい恰好を見ると、思わず手を触れてしまいたくなるのだ。


 それに、一体どこで着替えればいいのだ、と曙光は思う。


まさか目の前で着替えるわけにはいかないだろう。


 そんなことを秦明に言ったら、お前は乙女かと突っ込まれそうだが。
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