なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 杯に注がれた酒を、曙光は一気に煽った。


 すぐに二杯目が注がれ、またしても一気に飲み切る。


 こうでもしなければまともに朱熹と会話すらできなさそうだった。


 けれど、曙光は恐ろしいほど酒が強い。


二杯ほど一気に飲んだところで、酔っ払いはしない。


 朱熹はニコニコと笑顔を浮かべながら、三杯目を杯に注ぐ。


 まさか曙光が緊張しているとは夢にも思っていないのだろう。


「そなたも、飲め」


 曙光は杯を朱熹に持たせると、酒を注いだ。


「……いただきます」


 透明で芳醇な香りのお酒を、小さな口でくいっと一口喉に通す。


 朱熹は味わうように目を閉じて、「美味しい……」と幸せそうな顔で呟いた。


 そんな朱熹の顔を見て、曙光は知らずに笑みが漏れる。
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