なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 なるほど、これが恋というものなのか。


 曙光は、隣に朱熹がいるだけで胸が高鳴り、朱熹の笑顔を見るだけで幸せな気持ちになり、このままずっと一緒にいたいと思った。


「陛下と呼ぶのは……やめにしないか?」


 彼女と自分の間にある壁を、もっと打ち破りたい。


 朱熹は驚いた顔で曙光を見た。


「……なんと、お呼びすればいいのですか?」


「曙光、と」


 一人の男として見てほしい。


 朱熹は明らかに困ったような顔で目線を漂わせていた。


「さすがに、それは……」


 朱熹が断ろうとすると、曙光の真剣な目にぶつかった。


 ここで断る方が失礼だ、と朱熹は感じた。


「では、私のことも朱熹とお呼びください」


「……分かった」


 曙光は頷き、とても嬉しそうな顔を見せた。


 こんな顔もするのねと朱熹は胸がときめいた。
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