なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「……朱熹」


 曙光は少し恥ずかしそうに名を呼んだ。


「しょ、しょ、しょこ……しょ……」


 朱熹も呼んでみようとするも、恥ずかしさと恐れ多さで上手く言葉に出すことができない。


「なんだその呼び方は」


 曙光が笑う。


「急に呼び捨てなんて難しいです」


 朱熹は真っ赤になりながら俯いた。


 その姿があまりにも可愛くて、抱きしめたいと曙光は思った。


「徐々にで良い。曙光と呼んでくれるのを楽しみにしておる」


「……はい」


 曙光の包み込むような優しさに、胸が熱くなる。


 ……曙光。


 胸の中で呼んでみる。


 恥ずかしいけれど、胸の奥がきゅうっと締め付けられて温かくなる。


 この気持ちは、何なのだろうと朱熹は思った。
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