なりゆき皇妃の異世界後宮物語

「恥ずかしながら、餡餅というのを食べたことがない。

平民の間ではとても身近なものと聞いた。

宮廷の官吏たちが、あそこの餡餅は天江国一美味いと言っていて、自由に食べることができる官吏たちが羨ましいと思っていた」


「陛下は、食べたいものを自由に食べることができないのですか？」


　朱熹は驚いて聞いた。


「今、陛下と言ったな」


「あっ！ す、すみません」


「いや、いいんだ。焦らされた方が、曙光と呼ばれた時嬉しいからな」


「焦らしているつもりでは……」


　ふふっと曙光は悪戯げに笑う。


「作るのは宮廷料理人だからな。彼らが一生懸命考えて作ってくれたものに、口を出すことはない」


「要望を言うこともないのですか？」


「彼らは宮廷料理人としての誇りを持って仕事をしているから、平民の家庭料理が食べたいと言ったら気分を害してしまいそうでな。

まあ、考えすぎかもしれないが。

彼らの仕事には満足しているんだ。だからあえて言う必要性も感じなかった」