なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「なんだか陛下が怖くなってきました」


 朱熹はすっかり萎れて言った。


「どうして?」


「だって、何を考えているか分からないんですもの」


「人は皆、そうやって生きている」


「恐ろしい世界で生きているのですね。

心の中で何を考えているのか分からないのに、信じるなんてとても難しいです」


「そんな悲しいことを言うな」


 曙光のことを信じられないと面と向かって言われているようなものだ。


 曙光は深く傷ついた。けれど、朱熹はそれに気付かない。


「だって、陛下が私のことをどう思っているか分からないんですもの。疎ましく思っている可能性もあるのでしょう?」


「疎ましくなど思うわけがない」


「では、どう思っているのですか?」


 朱熹の無邪気とも思えるような純粋な問いに、曙光は口を開いたまま言葉を出すことができなかった。
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