なりゆき皇妃の異世界後宮物語
そう自分に言い聞かせながらも、けっこう無理がある考え方だなと思う。


 ただの人とはいえ、やはり皇帝は皇帝。


 でも……。


 朱熹は、知りたいという欲の方が勝った。


「……曙光」


 小さく呟く。


 朱熹は目線を落とし、顔を真っ赤にさせながら名を呼んだ。


 その瞬間、曙光の中で理性のたがが外れた。


 座っていた朱熹の腕を掴み、自分の方に手繰り寄せる。


 朱熹は体勢を崩し、驚くように上を向くと、曙光の唇に塞がれた。


 それはまさに、一瞬の出来事。


 朱熹の唇に、曙光の唇が押し付けられている。


 何が起こっているのか、朱熹はまったく分からなかった。


 曙光とて、ほとんど無意識の行動である。


 名を呼んだ朱熹があまりにも可愛く、思わずキスしてしまったのである。
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