なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「お前が皇帝になってから喧嘩してないからな。

俺も随分たまってたんだよ。思いっきり殴らせろ」


「殴られるのはどちらかな?」


 曙光は自信ありげに笑う。


曙光が皇帝になるまでは、二人はよく取っ組み合いの喧嘩をしてお互い傷だらけになっていた。


 いつも引き分けで終わっていて、お互い次こそは勝つと闘志を漲らせていた。


 それから五年。互いに成長した。


 今度はどちらが勝つのか誰にも分からない。


力も強くなり、お互いが本気でやりあえば下手すれば命にも関わる。


 だが、熱くなっている二人には、もう冷静な判断などできなかった。


「来い」


「望むところだ」


 秦明が、庭園に曙光を誘う。


 二人とも、ひょいと柵を乗り越え芝を踏みしめる。
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