なりゆき皇妃の異世界後宮物語
 互いに睨み合い、間合いを詰める。


 一触即発の雰囲気の中、間の抜けた声が割って入ってきた。


「おお、陛下、やっと見つけましたぞ。こんなところにいらっしゃったとは」


 目の細い、痩せた老人がにこやかな笑みで近寄ってくる。


「林冲……」


 喧嘩の邪魔をされ、曙光はがっかりとため息を吐いた。


 林冲は二人の異様な雰囲気に気がついている様子もない。


「何の用だ。余は今忙しいのだ」


 苛々しながら林冲に言う。


 早く喧嘩がしたくて堪らないのだ。


「実は朱熹様のことで……」


 朱熹、と聞いて曙光の顔が変わる。


「どうした?」


「あ、でも、今忙しいのでしたら、また今度にします」


 林冲はペコリと頭を下げて帰ろうしたのを、曙光が必死で止める。
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