なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「大丈夫、それくらいじゃ革胡は壊れない」


 陽蓮が後ろから朱熹を抱きしめるような体勢で弓を持ち、一緒に弦を弾く。


 朱熹一人よりも綺麗な音が出て、思わず笑みが零れた。



「あー、これは黒だな」



 急に府庫の方から声がして、陽蓮と朱熹は驚いて革胡から顔を上げた。


 すると、府庫のドアから、林冲、秦明、そして曙光が屋上に出てきた。


「え! 陛下!?」


 朱熹は慌てて立ち上がった。


 曙光は口を真一文字に結び、神妙な顔をしていた。


「いやー、朱熹ちゃんも大人しい顔して大胆だね。真っ昼間から不倫とは」


「不倫!?」


 朱熹は声を荒げた。


 まさか陽蓮と自分が不倫関係にあると思われるなんて青天の霹靂だった。
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