なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「……違うのか?」


 曙光は小さな声で聞き返す。


「当たり前です!」


 朱熹は声を荒げた。


 まるで曙光が朱熹に怒られているように見える。


「いやいや曙光、あれはどう見てもくんずほぐれつの仲だぞ」


 秦明は曙光の肩を抱き寄せ、耳元で囁く。


「ちょっと秦明さん! あなたは黙っててください!」


 朱熹が怒り、その迫力にさすがの秦明も思わずたじろぐ。


「本当に陽蓮さんとは何でもありませんから!」


 あらぬ疑いをかけられ、朱熹は困惑を通り越して怒りが勝っていた。


 朱熹にとって陽蓮という存在は、好きとか男とかそういう目で見たことが一度もない。


 それなのに、どうして不倫などという馬鹿げた話になるのだ。
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