なりゆき皇妃の異世界後宮物語
「珍しく必死だね」


 陽蓮は、ニヤニヤと笑って言った。


「当たり前でしょう!」


 まるで他人事のような態度の陽蓮にも怒りを覚える。


「ああ、そうか、浮かない顔の理由は曙光が原因か」


「え……」


 陽蓮はなるほど、といった様子で朱熹と曙光を交互に見つめた。


「好きな男に勘違いされたら、そりゃ嫌だよね」


「なっ……!」


 朱熹は顔を真っ赤にさせて、言葉を失った。


 自分でも気づかなかった気持ちをこうもあっさり口にされると驚きを隠せない。


 鈍いと思っていた陽蓮が、実はかなり鋭くて、思わぬ攻撃にやられてしまった。


(どどど、どうしよう、陛下の顔が見られない!)


 朱熹は陽蓮の方に顔を向けたまま、動くことができなかった。
< 149 / 303 >

この作品をシェア

pagetop